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TNT(ティーエヌティー)
ノルウェー出身の4人組。ジャンルは北欧メロディアスハードロック。TNTといえば、ヴォーカルはトニー・ハーネルだが、結成当時のヴォーカリストはダグ・インゲブリットセン(インガーブリッツェン)。彼はバンドには残りたかったが、ヴォーカリストとしての力不足と家族(妻と子ども)がこの仕事に非協力的であったという、なんとも悲しい理由で脱退している(解雇?)。その後、一度は元MSGのゲイリー・バーデンに決まりかけていたが、アメリカから届いた1本のテープに入っていた、当時まだ無名のトニー・ハーネルの歌声が素晴らしかったということで、彼に決まったらしい。彼らの代表作は3rdと4thで日本で大好評だったが、米国で売れなかったため、その後は米国で成功を目指すあまり、今までの作品とは違う方向に進んでしまい、日本での人気も失ってしまった。その後、解散・再結成を繰り返し、全盛期に近いメンバーで活動もしたのだが、期待はずれに終わっている。
KNIGHTS OF THE NEW THUNDER (ナイツ・オブ・ザ・ニュー・サンダー) (2nd/1984)

トニー・ハーネル(Vo)が加入した2ndアルバム。サウンド的にも曲の面でもまだまだという印象だが、トニーの伸びのある透き通った歌声はすでに完成されており、次回作以降の素晴らしい作品の片鱗は見える。2分〜4分程度という短い曲が並ぶ。メンバーはトニーの他に、ロニー・ル・テクロ(G)、モーティ・ブラック(B,Syn)、モルティン・ディーゼル・ダール(Dr)という4人。因みにトニー・ハーネルは当時トニー・ハンセンとクレジットされていた。またこのアルバムから世界的に発売され(世界的にはあまり話題にならなかったが)、ノルウェー国内ではNo.1ヒットとなった。アルバムジャケットのアートワークは正直カッコ悪い。そして裏に記載してある曲目は、曲順とは全く異なる。文字の見た目のバランスで配置したものと思われるが、ややこしい。
1-Seven Seas (セブン・シーズ)
スローテンポのナンバー。トニーの伸びやかなヴォーカルが堪能できる。後半のサビで聴けるバッキングコーラスも悪くない。ソロではロニー得意のギタープレイが聴ける。
2-Ready To Leave (レディ・トゥ・リーヴ)
アップテンポのハードロック調で始まるが、サビではテンポがゆっくりになり透明感のあるサウンドに。
3-Klassisk Romance (クラシック・ロマンス)
アコースティックギターのみのとても静かな短いインストゥルメンタル。
4-Last Summer's Evil (ラスト・サマーズ・イーヴル)
ミドルテンポのヘヴィなロックナンバー。
5-Without Your Love (ウィズアウト・ユア・ラヴ)
スローバラードナンバー。キーボードサウンドも上手く使い、しっとりとした雰囲気がある。
6-Tor With The Hammer (トール・ウィズ・ザ・ハンマー)
まずまずスピード感のあるハードロックナンバー。途中のコーラスはちょっと安っぽいかな。ロニーのテクニカルなギタープレイが聴ける。
7-Break The Ice (ブレーク・ジ・アイス)
スロー〜ミドルテンポのロックナンバー。コーラスはまずまず。
8-U.S.A.
スローテンポのヘヴィなナンバー。ギターソロではテクニカルなプレイも。
9-Deadly Metal (デッドリー・メタル)
ヘヴィなリフが特徴のスピード感あるメタルチューン。
10-Knights Of The Thunder (ナイツ・オブ・ザ・サンダー)
キーボードサウンドがかなり前面に出たスローテンポのロックナンバー。サビのコーラスはキャッチー。アルバムタイトルとは微妙に違うがタイトルトラックのようなもの。
11-Eddie (エディ)
日本盤ボーナストラック。スローテンポの落ち着いた雰囲気の1曲。
TELL NO TALES (テル・ノー・テイルズ) (3rd/1987)

彼らが大きく飛躍した3rdアルバム。サウンドプロダクションも大きく向上し、曲も明るくキャッチーで聴きやすくなった。ヘヴィなギターのリフが多いが、トニーの歌声と合わさると重い印象はなく、高揚感のある歌メロとコーラス、爽やかなギター、キーボードサウンドと融合し、見事に爽快なメロディアスロックナンバーになっている。しかし、全11曲で計30分少々というのはコンパクトすぎる。歌入りは2分〜4分。さらに3曲あるインストは全て1分ほどで、しかも全てが独立した曲で、HM/HRで定番の次の曲へのイントロダクションというのもなしの3曲。連続性のないインストがその短さだと、どうしても物足りない印象に。それでも素晴らしい曲が何曲もあり、これと次のアルバムはメロディ派には必聴の作品であることに間違いはない。ベストアルバムを持っていても、5,9曲目のために買っても損はないだろう。
1-Everyone's Star (エヴリワンズ・スター)
ヘヴィなリフで始まるアップテンポのナンバー。キャッチーなコーラスのサビはトレードマーク。
2-10,000 Lovers (In One) (10,000ラヴァーズ)
スローテンポのハードロックナンバー。ヘヴィなリフで始まるが、歌が始まると透き通ったサウンドで、トニーの伸びのある歌声はもちろん、サビでは高揚感のある心地良いコーラスが楽しめる。ロニーのテクニカルなギターソロも。因みにラヴソングであって、決して1万人の恋人がいるんだぜ、ということではない。君一人で1万人分の価値があるよ、みたいな意味。
3-As Far As The Eye Can See (見わたす限り)
アップテンポのメロディアスロックチューン。サビは歌メロも良く、コーラスは爽快。涼しげなキーボードも◎。
4-Sapphire (サファイア)
キーボードのきらびやかなサウンドから始まるインスト。ロニーのテクニカルなギタープレイが聴ける。
5-Child's Play (チャイルズ・プレイ)
スローテンポのバラードナンバー。メロディが素晴らしいことは言うまでもなく、所々でキーボードサウンドが奥行きを与えている点も◎。高揚感のあるギターソロがまた良い。
6-Smooth Syncopation (スムース・シンコペイション)
前の曲のアウトロかと思うような静かで短いアコースティックインストゥルメンタル。
7-Listen To Your Heart (リッスン・トゥ・ユア・ハート)
柔らかなギターリフから始まるミドルテンポのメロディアスロックナンバー。サビのコーラスは非常にキャッチーで耳に残る。
8-Desperate Night (あきらめた夜)
ヘヴィなギターのリフから始まるスロー〜ミドルテンポのロックチューン。正直サビは地味だが、全体としてはなかなか良い曲に仕上がっている。
9-Northern Lights (ノーザン・ライツ)
幻想的な雰囲気のスローナンバー。タイトルに相応しい1曲。北欧の冷涼な空気感を感じるが、そのなかにも温かさを感じ、聴いていて非常に心地良くなる。
10-Incipits (幻影)
こちらも非常に短いインストゥルメンタル。良い展開だが、これだけ短いとコメントも難しい。次の曲へ繋がるような流れにすると良かったのでは・・・。
11-Tell No Tales (テル・ノー・テイルズ)
非常にスピーディなハードロックナンバー。彼らの唯一と言っていいメロスピチューン。曲は約2分半と風のように去っていく。ロニーの超絶技巧のギタープレイは一聴の価値あり。
INTUITION (インテュイション) (4th/1989)

おそらくほとんどのファンが最高傑作に揚げるであろう4thアルバム。内容は前作を継いでいるが、爽やかさにさらに磨きがかかって、とにかく心地良い。朝から聴ける、というか朝聴くととても爽やかな気分になれるメロディアスハードロック(ポップ)チューンが並ぶ。サウンドも良く、歌メロもキャッチーで耳に残り、トニーの歌声も非常にマッチしており、コーラスも美しい。捨て曲なし。北欧メロディアスハードの超名盤。皮肉なことに、この後これを超える作品は作られていない。というか作れないだろう。なお、ドラマーはケネス・オディーンに交代している。
1-A Nation Free (ア・ネイション・フリー)
コーラスが非常に美しく高揚感のある短い曲。アルバム全体のイントロダクションのようなもの。次の曲に若干繋がっている。
2-Caught Between The Tigers (コート・ビトウィーン・ザ・タイガース)
スローテンポのグルーヴィーなロックナンバー。このアルバムのなかではギターサウンドがかなりロックな曲。ソロもけっこうテクニカル。
3-Tonight I'm Falling (トゥナイト・アイム・フォーリング)
とにかくイントロから爽やかなメロディが流れるミドルテンポのメロディアスチューン。涼しげなキーボードサウンドやサビの歌メロも素晴らしい。コーラスももちろん素晴らしい。褒める点しか出てこない。非の打ちどころがない名曲。
4-End Of The Line (エンド・オブ・ザ・ライン)
ピアノ伴奏の悲しいムードで始まるスローテンポのナンバー。サビは高揚感があり、希望に満ちたような雰囲気。耳によく残る。
5-Intuition (インテュイション)
キャッチーなギターのリフから始まるミドルテンポのナンバー。トレードマークの爽快なコーラスも聴ける。PVも制作された。これがまたカッコ良い。
6-Forever Shine On (フォーエヴァー・シャイン・オン)
ヘヴィなギターメロディから始まる1曲。サビになると高揚感あるキャッチーなコーラスが炸裂する。ギターソロではロニーのテクニカルなプレイも楽しめる。
7-Learn To Love (ラーン・トゥ・ラヴ)
明るい印象のギターサウンドから始まるミドルテンポの1曲。サビのコーラスは高揚感があり、非常に明るくてキャッチーなメロディ。
8-Ordinary Lover (オーディナリー・ラヴァー)
リラックスした息抜きとも言うべき短い曲。歌っているのもよくわからないおじさん(?)。ロニーが一部で歌っている。
9-Take Me Down (Fallen Angel) (テイク・ミー・ダウン)
イントロからキーボード全快のミドルテンポのメロディアスロックナンバー。コーラスも心地良い。素晴らしいメロディの曲。ギターソロはテクニカルなだけでなくメロディがまた良い。
10-Wisdom (ウィズダム)
哀愁のあるギターメロディで始まるスローテンポのナンバー。美しいハーモニーのコーラスは健在。全体を通して寂しげなムードの1曲。
TILL NEXT TIME (ティル・ネクスト・タイム) (Best/1996)

日本独自で96年に発売された、初期の2nd〜4thから選曲されたベストアルバム。つまり、全盛期(?)の楽曲群が手軽に楽しめる1枚。入門編には良いかもしれない。新録の3曲のうち2曲は4thアルバム収録曲の日本でのライヴ音源。1曲は89年に発売された来日記念盤(限定盤)に入った曲だが、これがまた素晴らしい。ファンはこの曲を聴くためだけに買っても損はしない。それだけの曲がスタジオアルバムからはずれるんだから、この時期は本当に神がかっていたということだろう。
1-10,000 Lovers (In One) (10,000ラヴァーズ)
3rdアルバムに収録。
2-Intuition (インテュイション)
4thアルバムに収録。
3-As Far As The Eye Can See (見わたす限り)
3rdアルバムに収録。
4-Tonight I'm Falling (トゥナイト・アイム・フォーリング)
4thアルバムに収録。
5-Everyone's Star (エヴリワンズ・スター)
3rdアルバムに収録。
6-Take Me Down (Fallen Angel) (テイク・ミー・ダウン)
4thアルバムに収録。
7-Seven Seas (セブン・シーズ)
2ndアルバムに収録。
8-Tell No Tales (テル・ノー・テイルズ)
3rdアルバムに収録。
9-Forever Shine On (フォーエヴァー・シャイン・オン)
4thアルバムに収録。
10-Break The Ice (ブレーク・ジ・アイス)
2ndアルバムに収録。
11-Listen To Your Heart (リッスン・トゥ・ユア・ハート)
3rdアルバムに収録。
12-Last Summer's Evil (ラスト・サマーズ・イーヴル)
2ndアルバムに収録。
13-Caught Between The Tigers (コート・ビトウィーン・ザ・タイガース)
4thアルバムに収録。
14-Knights Of The Thunder (ナイツ・オブ・ザ・サンダー)
2ndアルバムに収録。
15-Sapphire (サファイア)
3rdアルバムに収録。
16-End Of The Line (エンド・オブ・ザ・ライン)
4thアルバムに収録。
17-Electric Dancer (エレクトリック・ダンサー)
心地良いスピード感のあるメロディアスハード。非常に明るく、高揚感があり元気が出る。サビがまた素晴らしく盛り上がる。個人的にはTNTの数ある名曲の中でもトップ3には間違いなく入る。ソロのテクニカルなプレイも素晴らしいが、速いだけでなく奏でるメロディも良い。
18-Tonight I'm Falling (live) (トゥナイト・アイム・フォーリング ライヴ)
1989年8月17日の新宿厚生年金ホールでのライヴ音源。歓声が凄いが、それがこの時期の人気の高さを感じる。
彼らの技術とあの素晴らしいコーラスが本物であるということが良く分かる。
19-Take Me Down (Fallen Angel) (live) (テイク・ミー・ダウン ライヴ)
前の曲と同じライヴでの音源。これもまた凄い歓声で、人気のある曲だということが分かる。若干トニーの高音部の声が苦しそうなのは残念。ライヴで全編通してあの歌声をキープするのは難しいのだろう。