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SPACE ODYSSEY(スペース・オデッセイ)
スウェーデン出身4〜5人組。ジャンルはネオクラシカル様式美ヘヴィメタル。正式名称はRICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY(リチャード・アンダーソンズ・スペース・オデッセイ)。AVANTASIAと同じようなものだが、CDジャケットなどの表記を見ると、こちらは個人名を入れて呼ぶほうを望んでいるように思われるが、長いのでここでは省略する。バンド名にあるようにバンドの中心は2mの長身キーボードプレーヤー、リチャード・アンダーソンで、ギタリストのマグナス・ニルソンも中心メンバー。リチャード・アンダーソンはMAJESTIC〜TIME REQUIEM等の活動でも知られる。ヴォーカリストを務めるのはパトリック・ヨハンソン。自身のバンドであるASTRAL DOORSやWUTHERING HEIGHTSでの活躍でも知られる。声はよくロニー・ジェイムス・ディオやトニー・マルティンに似ていると言われる。ハイトーンでも低音でも安定感があり、非常に上手い。一時期色々なバンドで歌っていたこともあり仕事人シンガーとも言われた。2ndアルバムを最後に脱退している。結成時は他にゾルダン・ソルス(Dr)と、イングヴェイのバンドやTALISMAN、LAST AUTUMN'S DREAMなどで活躍した、今は亡きマルセル・ヤコブ(B)。
EMBRACE THE GALAXY (エンブレイス・ザ・ギャラクシー) (1st/2003)

ネオクラ色全開のデビューアルバム。全体を通して言えるのが、ボーカルのメロディラインがしっかり作られており、どの曲も非常にキャッチーでなので、どれでもシングルカットしてよさそうなくらい耳に残りやすい。こういったジャンルでは珍しい。5分〜6分程度の曲が多く、まずまず聴きやすい。ネオクラシカル様式美が好きな人には必聴の1枚。ただ、パトリック・ヨハンソンという素晴らしいヴォーカリストを獲得したのに、10曲中3曲がインストというのはちょっともったいない。それでもそのインストがなかなか良いので大批判する気はあまり起きない…。余談になるが、以前にメタルに興味のない一般の友人にこういうのを聴いているということで試しに聴いてもらったら、8曲目は聴いたことがあると言っていた。どこで聴いたかは分からなかったらしいが、なぜか聴いたことがあったらしい。ヘヴィメタルの曲がTV番組のBGMで部分的に流れることはあるが、それなのか…。はたまた、非常に似た曲が邦楽で存在するのか。もし、そういうのがあったら誰か教えてください…。
1-Despair And Pain (デスペアー・アンド・ペイン)
1曲目に相応しいメロディックなスピードナンバー。キーボードは割と控えめか。やはり歌メロが良い。キャッチーで耳に馴染みやすいメロディラインのサビが良い。ソロはギターとキーボードのバトルがすさまじい。
2-Embrace The Galaxy (エンブレイス・ザ・ギャラクシー)
アルバムタイトルトラック。部分的にミドルテンポだが全体は割とスピード感のあるメタルチューン。全体を通して歌メロが本当に良い。テクニカルなキーボードソロも。
3-Emposium (エンポジウム)
キーボードがキラキラと幻想的な雰囲気を作り出しているミドルテンポのメタルナンバー。変調が多く、速めの箇所とスローの箇所もある。
4-Entering The Dome (エンタリング・ザ・ドーム)
キャッチーなメロディが印象的なイントロから始まるスピード感のあるメタルチューン。歌メロはもちろん素晴らしい。テクニカルなソロも。
5-The House With A Hundred Windows (ザ・ハウス・ウィズ・ア・ハンドレッド・ウインドウズ)
この作品の全体のサウンドを象徴するようなインストゥルメンタル。インストとしては長めの約5分ある。
6-Grand Opening (グランド・オープニング)
6曲目でこのタイトルというのはユニークというか、そもそもこれが1曲目でも良いくらい、イントロからシビレる。疾走感があり、サビの歌メロもキャッチーで良い。これを試聴して購入を決めた。
7-Requiem For A Dream (レクイエム・フォー・ア・ドリーム)
イントロからテクニカルなキーボード全開のスローテンポのナンバー。パトリック・ヨハンソンの歌を堪能できる。
後半のキーボードソロがまたテクニカル。
8-Seduction Of Life (セダクション・オブ・ライフ)
非常にキャッチーでメロディアスなイントロから始まるスピードメタルチューン。サビの歌メロの良さはこのアルバムで1番。リーダートラックとしてもいいくらい。
9-A Perfect Day (ア・パーフェクト・デイ)
静かで幻想的なムードのインスト。果てしなく深く広い宇宙を連想させるような雰囲気。かなりおすすめ。
10-The Pagamo Thrill (ザ・パガモ・スリル)
日本盤ボーナストラック。「pagamo」はパガニーニとモーツァルトを繋げた造語。パガニーニは超絶技巧で知られる伝説の速弾きバイオリニスト。その24のカプリースの第24番。モーツァルトはご存知の通り。「トルコ行進曲」の一節。両者の有名な曲のフレーズを弾いているが、とにかくテクニカルで、スリリング。
THE ASTRAL EPISODE (ジ・アストラル・エピソード) (2nd/2005)

ベーシストのマルセル・ヤコブとドラマーのゾルタン・ソルスが脱退し(ベースはギタリストのマグナスが兼任してレコーディング)、新ドラマーにアンドレアス・ブロビエールを迎えた2nd。この新ドラマーがこの当時17歳。スウェーデンのドラマーコンテストチャンピオン。PLATITUDEにも参加しており、そのテクニカルなプレイを惜しげもなく披露している。アルバムの中身については、長い曲が多く、プログレのようにテクニカルな内容。リチャード・アンダーソンのもう一つのバンド、TIME REQUIEM寄りの楽曲が多く、こちらの特色はパトリック・ヨハンソンが歌っている点のみになっている。前作のような聴きやすさはない。パトリック・ヨハンソンの歌唱力を十分に発揮する曲は少なく、宝の持ち腐れ。前作があまりにも良すぎたために、少々がっかり。
1-Through Dreams And Reality (スルー・ドリームス・アンド・リアリティ)
キラキラのキーボードながら、ダークな雰囲気のギターサウンドが重ねてくるテクニカルなイントロで始まる。で、そのイントロが結構長いアップテンポのメタルナンバー。曲調が変化する場面のコーラスが美しい。歌の部分は少ない。半分インストのよう。
2-Astral Episode (アストラル・エピソード)
アルバムタイトルトラック。怪しげなムードで始まる。インストかと思うほどイントロが長い。約8分半と長く、ほとんどインスト。因みにパトリックのバンド名と引っかけている意図はないそうだ。
3-Lord Of The Winds (ロード・オブ・ザ・ウインズ)
キーボード全開のイントロで始まるスローテンポのメタルナンバー。一応歌の部分もあるが、ほとんどインスト。
4-Dazzle The Devil (ダズル・ザ・デヴィル)
アップテンポでテクニカルなメタルチューン。歌メロが良くサビもキャッチーな曲。ソロはテクニカルだが暗く地味な印象。7分半の長さは必要ないか。終わり1分は曲調も変わりギターインストに近い。歌メロが非常に良いだけに曲の構成がもったいない。
5-Back To The Dark (バック・トゥ・ザ・ダーク)
タイトルにあるように非常に暗く重い雰囲気のスローチューン。間奏が長い。
6-Presence Of Mind (プレゼンス・オブ・マインド)
まずまずスピード感もあるテクニカルなインストゥルメンタル。どうしてもテクニカルなプレイを聴かせたいなら、こういうインストでやれば分かりやすくて良い。歌入りの曲の全てにそういう要素を入れるのは違うと思う。この曲はなかなか良い。ドラムとキーボードのみの緊張感あるバトルは独特で◎。
7-Reversation (リヴァーセイション)
テクニカルで長いイントロで始まるミドルテンポのヘヴィな曲。テンポアップするサビの歌メロは非常に良い。長ったらしい間奏がなければとても良い曲。
8-The Seventh Star Fantasy (ザ・セヴンス・スター・ファンタジー)
暗く重いムードでクワイアも入る怪しげなイントロを含め曲全体が映画音楽のよう。民族音楽風のメロディをバックに、2種類の歌声を使い分けるユニークなヴォーカルは聴きどころ。サビはスローで非常にヘヴィなサウンド。
9-The Finest Of A Good Kind (ザ・ファイネスト・オブ・ア・グッド・カインド)
日本盤ボーナストラック。ピアノ伴奏の美しいメロディが流れるスローテンポの落ち着いた雰囲気のナンバー。リチャード・アンダーソンの家族で亡くなった人について歌った曲。悲しげではあるが、前向きになれる優しさがある。とても感傷的な気持ちの1曲。このアルバムでは異色の美しさ。